好きなことを隠した学生時代、今は好きなことを仕事に。ヘアメイクアップアーティストの子ども時代とは?
未来VOICEシリーズは、連載のインタビュー記事です。インタビューの対象は学歴・経歴不問、「好きなことを大切に」「今をイキイキと生きている」「若者」の3つに当てはまる人。そんなみなさんの今と子ども時代をひもとくことで、これからの教育を考えるヒントにしませんか?
第3弾のインタビューはこのかた!
HIYORI
1997年生まれ、埼玉県出身。私立小学校・私立中高一貫校卒業。美容部員を仕事をきっかけにメイクに興味をもち、「ヘアメイクアップアーティストの仕事がしたい」と、大学を中退して一念発起。ヘアメイクスクールで1から基礎を学んだ後、師匠に弟子入り。2020年からフリーランスのヘアメイクアップアーティストとして活動開始。現在は、『素材を活かし、魅了を最大限に引き出す』をモットーに、‟盛れるメイク”を得意とし、雑誌・TV・イベント・ライブ・メイク講師など幅広いジャンルの現場で活躍中。
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フリーのヘアメイクアップアーティストとして活躍中!
ーー現在どんなお仕事をされていますか?
フリーランスのヘアメイクアップアーティストとして、雑誌やテレビ、YouTubeなどの媒体で仕事をしています。そのほかに週1回、高校に出向いて高校生にメイクを教えたり、企業から依頼を受けて婚活や就活メイクのレッスンもしたりしています。
最初の2年はヘアメイク事務所でアシスタント業務をし、その後の半年は同じ事務所でアシスタントではない立場でヘアメイクをしていました。事務所での仕事を続けるうちに、「自分のスタイルを大切にしたい」「コミュニケーション能力には自信があるから、独立したほうが自分に合った働き方ができるかも」と思うようになりました。私はすごくポジティブなので、「若いうちは背負っているものが少ないから、失敗してもなんとかなる!挑戦するなら今だ!」と、あまり恐怖心を抱かず思い切って独立しました。
ーーヘアメイクアップアーティストの仕事は、どんなことが楽しいですか?
メイクが終わると、メイクした本人が「かわいい!」と喜んでくれるのがとても嬉しいです。特に、一般のかたはプロにメイクしてもらう機会は少ないと思うので、すごく喜んでくれます。その様子をみると、私も嬉しくなりますし、もっと頑張ろうというモチベーションになります。あと、芸能人をメイクする仕事は、雑誌の誌面やテレビの映像など、形として残ることも嬉しいです。そのため、一般のかた向けのメイクも、芸能人へのメイクも、どちらも頑張っていきたいと思っています。
ーーメイクの練習はたくさんしますか?
ヘアメイクの仕事を目指す場合、一般的には専門学校で学びますが、私は普通の大学に進学したのでスタートが遅いのです。遅れている分、練習はたくさんする必要がありますし、「20代は下積み」と言われるような業界でもあるので、時間があるときは友だちにメイクをさせてもらったり、自分の顔でも練習したりしています。ただ私は「練習!」と思うと気持ちがど~んと重くなってしまうので、練習とは思わずに「かわいくしよう!」「好きなことをやるぞ!」くらいの気持ちで楽しんでやっています。
好きなことを隠した学生時代
ーーヘアメイクアップアーティストになりたいと思ったきっかけは何ですか?
最初のメイクへの憧れは、3歳から始めたダンスの発表会だと思います。ダンスの発表会はみんなメイクをするのですが、少し年上のお姉さんたちがすごくきれいで、「私もあんなふうになりたい!」と憧れを抱いていました。小学校低学年のときには、おもちゃ屋さんで子ども用の化粧品を買ってもらうくらい、とてもメイクに興味がありました。
でも、美容好きな自分を両親にも祖父母にも隠していました。というのも、両親の期待は「よい大学に行くこと」だと感じていたからです。私は小学校から私立の学校に通わせてもらっていたり、祖父母から医者になることを期待されていたり、母がよく「CAさんってすてきよね」と言っていたりしていたので。なので、当時の私はそういった周りの期待をくんで「大きくなったらCAさんになりたい」と言っていましたね。高校の受験期になっても「本当はメイクの専門学校に行きたい」とは言えませんでした。
大学は指定校推薦で女子大の文学部に入学しましたが、なにせやりたいことではないので全然やる気が湧かず、授業にはほとんど出ませんでした(親不孝だったと反省しています…)。当時は、美容部員のアルバイトとインカレのダンスサークルにハマり、没頭していました。美容部員をするなかで、メーカーやブランドを問わず、自分が好きでこれがいいと思った化粧品や道具でメイクをしたいと思うようになり、「ヘアメイクアップアーティストになりたい」という想いが芽生えました。
好きなことはとことんやる!嫌いなことは絶対にやらない!
「みんながやっているから私もやる」みたいな考えは全くなくて、「好きなことしか絶対にやりたくない」といつも思っている子どもでした。性格は、目立ちたがりでとにかく明るい、そして好きなことについてはすごく負けず嫌いでした。子どもの頃から、好きなことについては、「私はこの分野で絶対成功する!」と思うくらい、ポジティブに考える子だったと思います(今もですが)。一方で、やってみて「これはできないな」「好きじゃないな」という感覚があると、無理に克服しようとせず、とにかく好きなことをとことんやる子でした。
ーー勉強はどうでしたか?
小学生の頃から本当に勉強が大嫌いで苦手でした。コミュニケーション能力は先生に褒められていましたが、テストのような勉強の成績はとても悪かったです。両親から「勉強しなさい」とよく言われましたが、かたくなに「ずっと座っているのが嫌!」「勉強やらなくても生きていけるもん!」と言いながらダンスに夢中でした。
熱中していることを応援してくれた両親
ーーご両親の教育方針はどのようなものでしたか?
ただ「大学を中退したい」と言うだけだったら反対されたかもしれませんが、「仕事としてヘアメイクをやりたい」ときっぱり伝えたら、当初は「せっかく入学したのにもったいない…」と言っていた母も理解してくれました。さらに、大学時代、心身共に明らかな不調が続いたことがあり、そのことを両親に話したら、「人生は長いからどうにでもなるよ」「大学はやめていいよ」と言ってくれたんです。大学中退やヘアメイクの仕事は、もしかしたら本当は両親が望む道でなかったかもしれませんが、私のことを認めて応援してくれました。
ーー両親に言われて、今でも心に残っている言葉はありますか?
わりと最近のことですが、メイクの仕事を始めたばかりで余裕がなかったとき、「焦らずゆっくり楽しみな」と言ってくれました。それを聞いて、「そうか、仕事って嫌なものではなくて、楽しむものなんだ」と、はっとして、初心に返りました。私にとって「楽しい」の指標は、それをやっていて自分の心がうきうきするかどうかなので、メイクの仕事もただこなすのではなく、楽しんでやることが一番大切だと気付きました。子どもの頃から、両親は私の性格を理解しながら、私が本当にやりたいことを引き出してくれます。
メイクへの想いと夢
ーーメイクのお仕事では、どんなことを大切にしていますか?夢や目標はありますか?
メイクで私が大切にしたいと思っているのは、その人の素材を活かして盛る(魅力を引き出す)こと。「女の子はメイク次第で誰でもかわいくなれる」ということを信念にしています。メイクで顔の印象をガラッと変えられると思っています。
今後の夢は、子ども向けの化粧品のブランドを作ることです。子どもの頃、おもちゃ屋さんで化粧品を買ってもらって嬉しかったからこそ、化粧品に興味を持った子が初めて買うブランドは「これ」、小学生のメイクしたい気持ちを応援する化粧品は「これ」の、「これ」に当たるような化粧品を私が作りたいなと思っています。
ーー貴重なお話ありがとうございました!
インタビューを終えて
「好きなことしか絶対にやりたくない」という言葉が印象的でした。「みんなができることは私もできなくちゃ…」と、平均以上を保ちたくなる人が多いと思いますが、HIYORIさんには「苦手なことはやらない、好きなことはとことん突き詰める」という太い自分軸があるんだなと感じました。そして、HIYORIさんのことを理解し、応援してくれるというご両親。HIYORIさんが今活躍しているのは、HIYORIさんの好きなこととHIYORIさんの生き方を認めてくれる温かい家族がいるからなんだろうなと、家族の関係性の大切さも学ばせてもらいました。ありがとうございました!
Written by Saho Ishioka