長期コースを通した変化とは?受講生の成長エピソードをマイクラ講師にインタビュー!
2024年1月から全12回で実施してきたマインクラフト(以降マイクラ)の長期コース『空港を再現!社会の「なぜ」を探検しよう!inマインクラフト』について、講師(サポート担当堀口先生)にインタビュー!全12回を通して感じた受講生の成長や変化、マイクラ講座の魅力についてご紹介します。
堀口翔平
松本秀峰中等教育学校 数学科教諭 情報システム推進部長
マイクロソフト認定教育イノベーター(MIEE)
<趣味>
大人になった今でもゲームが好きで、休み時間には生徒たちとゲームの話題で盛り上がることも…。旅行が好きで休みの日には車やバイクに乗って遠出をします。去年の夏休みには北海道をバイクで走り回りました。
みんなで大きな空港を再現!マイクラ講座のねらい
ーー今回の講座の内容やねらいを教えてください。
大きなテーマとしては「みんなで協力して、マインクラフトで空港をできるだけリアルに再現しよう」というものでした。その裏には、空港をテーマにして社会の”なぜ”を考えていこう、というねらいがありました。たとえば、空港の滑走路にはさまざまな模様がありますが、「なぜここに、こんな模様があるんだろう?」と疑問を持ったり、計画的かつ綿密に作られた空港の施設や作業動線について、「なんでこんな配置なのだろう?」と考えたりです。
空港に限らず、社会の中には「とてもよく工夫されているのに興味がないと気付けない」「知らないと一生知らないまま」ということがたくさんあるかと思います。今回の講座を通して、「気付く力」「考える力」を身に付けられればいいなと思っていました。ほかにも、発表を通してコミュニケーションスキルを身に付けてほしい、人と協力することで協調性も身に付けてほしいというのもありましたね。
話が止まらなかったのが、最後は周りを意識し、短い時間で伝える力も
ーー全12回で、受講生にどのような変化がありましたか?
まずは飛行機をはじめとした乗り物系が大好きな男の子、Aさんの話からしましょう。Aさんは自分が知っていることをみんなにたくさん話してくれるタイプで、話し始めると止まらないんです。
講座の最初の頃は、その日の進捗発表で「一押しポイントは?」と聞いてもなかなか1つに絞れず、5個も6個もポイントを挙げてしまいがちでした。ですが、最後の講座で「持ち時間は1人2分。発表のテーマは1つに絞ろう」と伝えたところ、Aさんはポイントを1つに絞って時間内で話せるようになっていました。前半の頃を思い出すと、非常に大きな変化だと思いましたね。
また、講座も後半になると目に見えて他者を意識するようになりました。Aさんは空港の1階ターミナルビルを作る担当でしたが、ペアで作業している子に対して、「~さん、〇〇しようよ」とか「~さん、〇〇は今どうなってる?」と名前を呼びかける回数が増えました。「この講座は自分1人で受けているんじゃない、ほかの人も一緒に受けているんだ」という自覚が生まれていたように感じましたね。
ーーその変化はどうして生まれたのでしょう?
短い時間で話せるようになったのは、毎回の講座の最後に行う進捗発表が大きいと思います。進捗発表では短い時間で話そうという形式だったので、要点を絞って分かりやすく伝える経験を積むことができたのだと思います。話したいことをただとりとめもなく話すだけなら、勇気と度胸があればできますが、制限があるなかでどう伝えるかということを、12回を通して学んでくれたのかなと思います。
また、「マイクラで空港をリアルに再現する」というのは、規模がかなり大きいので、実現するには分担や協力が不可欠です。この分担や協力の必然性があったおかげで、子どもたち同士で周りを意識しながら協力できるようになったのではないかと思います。子どもたち主体で進めていくのもあり、作業をしていくと「自分がやっている作業が、周りのみんなに貢献できている」と分かり、自覚が生まれたというのもあると思います。
協働作業だからこそ、子どもたち同士で認め合い、自信になっていく
ーーほかに印象に残っているエピソードはありますか?
Aさんとは対照的に、Bさんは講座の直前にマイクラを買ったという初心者の女の子です。スキル面で分からないことが多かったからか、最初は発言がほとんどなく、自信が無さげで、困っていても大きな声で助けを求められませんでした。とはいえ、マイクラは、「とりあえず作ってみて、失敗したら壊して作り直せばよい」というのが魅力で、Bさんも回を重ねるごとに「間違ってもいいから、いったん作ってみればいいんだ!」という自信がついた印象でした。後半、ほかの子と協力してつくる場面になると、「こうしたほうがいいんじゃない?」と自分から話す様子も見られました。
そして最後の講座では、「何か足りなそうなものがあったら、自分で考えて作ってみてください」と、かなり挑戦的な丸投げをしたのですが、そこでBさんは「空港で働く車が足りない!」と自ら気付き、自分で車を作って、その車の役割まで発表することができました。最初の頃を振り返ると、Bさんがここまでできたのは、大きな成長だと思います。
ーー自信はどのように生まれたのでしょうか?
作業は分担して行いましたが、マイクラ内のアバターでお互いの様子を見に行く場面が多くありました。マイクラ内でほかの受講生が自分の作業の様子を見に集まってくると、注目されているという気持ちになりますよね。さらに、お互いが作ったものを見て「すごい!」「こうなってる!」という会話も多く、子どもたち同士の自然な承認が自信につながったのだと思っています。これに加え、各回の進捗発表で講師からプラスのコメントをもらったりすることも自信になっていったのではないかと思います。
長期コースを継続すると、成長の幅も大きい
ーー長期コースを継続している子は成長も大きいですか?
そうですね。継続している子はレベルが1段階高い印象です。作業をして、自分がやったことを発表して、評価をもらって、という繰り返しの経験を継続している分、発表が上手ですし、度胸があります。特に講座前半の進捗発表では、長期コースを継続している子たちが、ほかの子の見本になってくれていました。
小学生くらいですと、発表したいことをとりあえずぽんぽん並べて「これでおしまい」になりがちですが、長期コースを継続している子たちは、話の構成の筋道が立っていて、内容にもまとまりがありました。そういう場面を目の当たりにすると、長期コースは継続するほど成長の幅も大きいと感じます。
興味や知識の枝分かれをいかに増やせるかが探究学習のコツ
ーー堀口先生はさまざまなところでマイクラ講座の先生をされていると思いますが、みらいキャンパスのマイクラ講座の魅力は何だと思いますか?
マイクラ講座というと、STEAMやメイクコード、プログラミングのスキル向上というイメージがあると思いますが、みらいキャンパスの講座は、マイクラをベースにした探究学習ができるのが魅力だと思います。
今回の講座でいうと、マイクラでリアルな空港を作るにあたって、「滑走路を1ブロック1メートル四方のマイクラで再現するは、何ブロック必要?」といった数学的な考え方や、空港の人の流れについての社会の知識が必要になります。私は、「探究学習で重要なのは、メインの流れに、いかに枝分かれの支柱を増やしていけるか」だと思っています。そしてこの長期コースは、12回あるからこそ、枝分かれの支柱を増やすチャンスが多いとも思います。
また、探究学習の結果伸びるのは、「非認知能力」※なのではないかと思っています。先ほど紹介した受講生のAさんやBさんの成長は、学校の通知表やテストの点数には現れないかもしれませんが、この講座を通して間違いなく成長したと思っています。
※非認知能力…テストの点数などの数値で計れる「認知能力」以外のスキルや資質。さまざまな定義がありますが、ここでは、コミュニケーション力や我慢強さ、自己を律する力などを想定しています。
ーー講師として意識していることは何ですか?
一言でいうと、「モノづくりの難しさと、達成感を感じてほしい」ということです。私は、マインクラフトとは、3Dの自由帳であると思っているのですが、たとえ自由帳の落書きであっても、目標や骨組みがないと途中で終わってしまいがちですよね。モノづくりで重要なのは、最後までやり遂げ、完成させる経験だと思っています。つまらないゲームのことを、「クソゲー」なんて言うこともありますが、完成しないとクソゲーにすらなりません。苦労して作り上げ、完成したときの達成感をぜひ味わってもらいたいですし、完成したものに対しては敬意を払ってほしいとも思います。
マイクラは、誰でも入りやすい間口の広さ、ハードルの低さが魅力です。ですので、少しでも「マイクラが好き」「マイクラをやってみたい」という気持ちがあれば、実践しながら探究的な学びを自然と体験できると思います。
ーー貴重なお話、ありがとうございました!
インタビューを終えて
全12回の長期コースならではの子どもたちの変化を詳しく聞くことができました。インタビューではほかにもいろいろなエピソードをお伺いできましたが、堀口先生が子どもたちのことをよく見ているからこそ、小さな変化にも気付き、適切なコミュニケーションを取ってくださったのだろうなと想像しました。マイクラは今流行りの教育ですが、スキルセットとしてのプログラミングにとどまらず、コミュニケーション能力や他者と協力する力、他者を思いやる心などを育めるという、みらいキャンパスのこだわりを改めて感じました!今後も、堀口先生をはじめとした講師の皆さんと一緒に、みらいキャンパスならではの学びを創造していきたいと思います。
Written by Noriko Arai(みらいキャンパス 共創ディレクター)