遊びのように夢中になりながら、科学の面白さに触れられる!みらいキャンパスで、子どもたちの笑顔と学びにあふれる科学実験講座を実施しているあべまり講師。本記事では2025年6月実施のアイス実験講座の様子と、あべまり講師の講座設計や学びに対する想いを、みらいキャンパス・広報担当の田中がレポートします。

小学校教員として7年間勤務したのち、2018年より「わくわくキッズ」として独立。東京・神奈川を中心として科学館、図書館でイベントを行う他、学童クラブで定期サイエンス教室・オンライン実験教室を年間250回以上実施している。その他、民間企業・施設への「謎解き×サイエンス」のコンテンツ提供、子どもの認知や発達をテーマに企業研修や教育コンサルティングも行う。  

どもが主役になるレッスン設計の工夫 

- あべまりさんの講座は、どんなテーマの回も子どもたちの表情がいきいきとしているのが印象的です。子どもたちの豊かな表情や学びを引き出すために、レッスン設計で意識されていることはありますか?

 まずは、「自分で発見する」場面を必ず入れるようにしています。何かを学ぶとき、誰かから教えてもらうことも大切ですが、自分で見つけたことは驚きや感動として心に残るのですよね。そこには「自分で見つけたんだ!」という嬉しさ・喜びがあって、同時に「誰かに教えたい」 「見せたい」という次の気持ちにつながります。その瞬間の子どもたちのとびきりの笑顔を想像しながら、そういった場面が生まれるような仕掛けを考えてプログラムを構成しています。決められた通りに実験をしていくのではなく、「わくわく感」や「自分で発見する」場面を大切にしているのです。

 また、「子どもの脳に合わせる」 「五感を取り入れる」ことも意識しています。 
 私は学生時代から子どもの発達に興味があり、今も大学院で勉強しているのですが、参加者の発達段階や学齢を踏まえて無理のないレッスン構成を心がけています。「低学年さんはとにかく自分の手をつかって試行錯誤してもらおうかな」や、「中学年さんは実験をする前に結果を予想するとおもしろいかな」など、学年に応じて進め方をその場で変えることも多々あります。 
 「五感を取り入れる」ことは、飽きさせない工夫として意識しています。プログラム全体を通して「聞く」 「見る」 「やってみる」 「話す」、場合によっては「書く」がバランスよく入っているかな?と、最後にチェックするようにしています。 

決めつけず、子どもに寄り添う学びのかたち 

レッスン中は予想外のことが起きることもあると思いますが、実際のレッスン中に意識されていることはありますか? 

 レッスン時に意識していることは「参加した子どもたちのチャンネルに合わせる」ことです。「チャンネルに合わせる」というのは、子どもの興味や好きな話題のことだけではなく、「この子は聴覚よりも視覚から情報を得やすいかな?」や、「リズムや音楽を使うと理解しやすいかな?」など、その子自身の認知の仕方を探り、それに合わせるようにしています。自分に合ったやりかたで授業が進むほうが、理解が深まりますし、子どもも大人も楽しい。だから、レッスン中は子どもたち一人ひとりに合わせて車線変更をしたり、寄り道をしたりすることも多いです。 

 こうしたスタンスは、大学時代のボランティア活動が原点になっています。教授の監督のもと、学生グループでしっかりプランを練り、1日お出かけコースを企画して子どもたちと関わっていました。どんなアプローチをすれば子どもたちがより成長できるか、学生同士で真剣に話し合い、実施後に丁寧な振り返りを行っていました。ときには「この関わり方で良かったのか?」と教授から厳しく問いかけられることもありましたが、言葉だけでなく、行動や仕草から子どもの気持ちや考えを汲み取っていくのがとても楽しかったことを覚えています。「その場その場で子どものチャンネルを探っていく」という私の今のスタイルは、まさにその経験から培われたものだと感じています。 

 また、レッスン時に意識していることとして、「理由を聞く」ことも大切にしています。当たり前ですが、大人の方が人生経験豊富なので、子どもの言葉を自分なりに解釈してしまうことがあります。でも、実は子どもが考えたことや見つけたことは、もっと違うところにあることもあります。だから、決めつけないで「どうしてそう思ったの?」 「それって…ということ?」と聞くようにしています。ときどき、なるほど!と思うこともあって、理由を聞くのは楽しいです。プログラムが終わった後に、おうちの方に「こんな風に考えられていましたよ」と、その内容を共有させていただくことも多いです。 

子どもたちの笑顔があふれた、ひえひえアイス実験講座 

 「自分で発見する」 「五感を使って学ぶ」 「子どもの発達に合わせる」——そんなあべまり講師のこだわりが詰まった科学講座が、6月21日(土)にオンラインで実施されました。今回のテーマは、暑い季節にぴったりの「塩でひえひえアイス実験アイス実験」。小学2年生から4年生の4名が参加し、画面越しに一緒に実験を楽しみました。 

 授業の冒頭では、実験の準備物の確認からスタート!「○○さんはOKだね!」 「○○さんぐらいの氷の量で大丈夫だよ!」と一人ひとりの名前を呼びながらコミュニケーションを続けるあべまり講師。はじめは緊張していた子どもたちの表情も、見守られている安心感からどんどん和らいでいきます。実は、この「名前を呼ぶ」声がけもあべまり講師の工夫の1つ。まずは講師が子どもの名前を呼んで声をかけることで、講師と子どもの間に “糸”を紡いでいきます。さらに、「○○さんがやっているのは○○さんと同じだね」 「〇〇さんと〇〇さんは別の結果が出たね」と、子ども同士に意識が向くような声がけすることで、講師を介して子ども同士の”糸”を繋げていきます。そうして、オンラインの場であっても、「みんなで一緒に学んでいる」感が生まれるのが、あべまり講師の講座ならではの特徴です。 

 いよいよ始まったアイス実験では、氷と塩を入れた袋にジュースの入った小袋を入れて、シャカシャカと振ってジュースを冷やしていきます。夢中で袋を振る子どもたちに、あべまりさんは「振っていくと、だんだん音が変わってくるかもしれないね」と投げかけ、五感を使った気づきを促します。できあがったアイスを食べて、「普通のアイスよりシャリシャリしておいしかった」 「アイスにはならなかったけど、冷たくなっておいしかった!」とにこにこ笑顔の子どもたち。うまくいかなかった子に対しても、あべまり講師は「その結果もとっても大事!どうしてそうなったかを考えるのも、科学の楽しさだよ」とやさしく声をかけ、前向きな学びにつなげていました。 

 後半では、塩の量・振る時間など条件を1つ変えて実験に再挑戦!番号で示された「条件」の中から、子どもたちは変える条件を1つ選び、番号を指でみんなに伝えます。こうしたハンドサインを使った意思表示も、あべまり講師ならではの工夫ポイントです。オンラインでは、子どもの細かな表情や意志が講師に伝わりにくい場面があるうえ、発言時には画面越しに注目を集めることになり、子どもにとっては対面以上に発言のハードルが高くなることもあります。そこで、ハンドサインを取り入れることで、「こうしたい」 「こうだったよ」といった思いを、子どもたちは安心して表現することができるのです。さらに、同じタイミングでハンドサインを使って状況や思いを確認しあうことで「みんなでやっているんだ!」という一体感も生まれます。こうして変える条件を決めた子どもたちに対して、あべまり講師は「それを変えたらどうなるかな?」と問いかけていきます。すると子どもたちは自然と自分の頭で仮説を立て始めます。「塩を増やしたら、振る時間も短くなると思った!」と話す小4の子どもには、「どうしてそう思ったの?」とさらに掘り下げ、学年や理解度に応じて対話を深めていきました。 

 終了後の保護者に向けた放課後タイムでは、「自分でやり切る経験を楽しめてよかった」  「またやらせたい!」と保護者のかたからの嬉しい声も!子どもたちの“やってみたい”を引き出す、科学の楽しさに満ちた講座となりました。 

 夢中になって科学の面白さに触れられるあべまり講師のサイエンス講座は、2025年7月も開講を予定しています。最新情報はPeatixにて随時ご案内していますので、ぜひフォローしてお待ちください。 

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