未来の共創に欠かせない「対話」のために、自分の内面や相手の思いと向き合う

みらいキャンパス物語
2024.02.08

自分のあるがままの表現や状態を受け入れてもらえる安全・安心な空間 – そんな空気が満ちている、さだかね志保さんの講座では、それぞれのペースを大切にしながら、一緒に参加する子どもたち同士が、お互いの思いにも向き合う様子に毎回触れることができます。未来の共創に欠かせない「対話」につながるコミュニケーションであるNVC。そのベースとなる「自分と仲良くなること」を体感していった子どもたちと保護者の方々の様子をお伝えします。

※NVCとは、共創的対話を可能とするシンプルかつパワフルな方法として注目される『Nonviolent Communication(非暴力コミュニケーション)』の略称です。

■「正解のない謎解き?!」に挑戦! NVCで日常をよりハッピーに過ごそう
■参加者の学年:小学1~3年生

クイズや発展的な問いを通じて「なんでも話せる」安心感が生まれる – 地球と人間、どっちが賢い?

この講座では、あるがままの状態で参加して大丈夫だと子どもたちがお互いに思えることが重要。お互いのことを知る質問や、ちょっと意外な正解のクイズなどでコミュニケーションを重ねていくのですが、子どもたちの答えを受け取りながら、さらに本質に迫る「問い」を投げかけるのが志保さんの素敵なところ。

例えばある回の講座初日には、地球が45億4000万年前に生まれたというクイズから、歴史の話を経て「地球と人間はどちらがたくさんのことを知っている?」という問いに。
「長く生きているから地球かな?」
「でも地球には脳みそがないから人間じゃないかな」
「地球に脳みそがあったらいろいろ知っていそう」
子どもたちからはさまざまな意見が出ます。
実はこの問いでは、常に変化する自然という大きな流れの中に人間がいる、ということを伝えたかったのですが、子どもたちから出てきた意見を志保さんはすべて受け止めます。どんな意見も間違いではない、ここでは話して大丈夫、子どもたちは初日のとても早い段階からそのことに気づき、自分の考えをこの場に出せるようになっていきます。

自分や相手に向き合い感情やニーズに目を向けることは、大人だって難しい

最終日にはお互いの話を聴いて、そこにどんな感情やハッピーのもとがあるかを推理してみる謎解きゲームをします。
自分の身体や心の声を聴くことも大変だったけれど、それが相手のこととなるとさらに真剣に耳を傾けなければなりません。

ゲームが始まる前に写真を見ながら感情やニーズを考える練習をした時は、さくさくと答えていたAさん。ところが実際にもうひとりのBさんのお話を聴いた後、リストをじっくり見て考え込んでしまいました。
「Bさんはこのときどんな気持ちだったのかな」
「このとき満たしたかったハッピーのもとは何だったのかな」
やさしいAさんは、Bさんの気持ちを思って真剣に考えてくれていたのです。

「Aさん、ヘルプが欲しかったら『1』、自分でもっと考えたいよ、だったら『2』って指でつくって教えてね」
という志保さんの声掛けに、すかさず指で『2』と示すAさん。
ここでも志保さんの声掛けが、自分でじっくり考えること、考えたことをこの場に出すことにチャレンジしているAさんの背中を押します。Bさんもせかすことなく、志保さんと一緒にAさんを待ちます。

実は相手の感情やニーズを考えることは、大人でも難しいしうまくいかないこともあります。
しかし最後までこの講座にチャレンジしてくれた子どもたちは、
「理解されること、みてもらうこと、聴いてもらうことのニーズが満たされた」
「気持ちが落ち込んだときやいやなことがあったときにも使えそう」
といった感想を残してくれており、自分と仲良くなって自分自身を大切にすること、相手の気持ちや感情を考えて大切にすることができる、そんなコミュニケーションの種を得てくれているのではないかと感じています。

コミュニケーションは子どもだけがするものではない – 保護者の方が講座から得る気づき

この講座でもうひとつ特長的なのは、レッスン中の志保さんと子どもたちのやり取りを通して、我が子のニーズに気づいたり、声掛けのヒントを得たり、という保護者の方の視点での気づきもある点です。
友達とのコミュニケーションがうまくいかなくてイライラしていたり、自分自身を表現することに難しさを感じていて自分が出せなかったりと、子どもたちが日々の生活の中で困ったときに、どのようにサポートができるのかと悩む保護者の方は少なくありません。
そんなとき、子どもたちの感情やニーズを観察すること、また保護者自身が自分の感情やニーズを理解することがコミュニケーションの一助となることを、子どもたちが受講する横でレッスンを聴いていて感じられるのだそうです。

「こういったコミュニケーションが、子ども同士だったり親子だったり、いろんな場面で使われるようにもっと広がっていくといいですよね」
このようにおっしゃってくださった保護者の方がいましたが、まさにこれが、志保さんが実現したいと考えている未来。
志保さんの講座を通じて、自分も相手も大切にできる、そんなコミュニケーションの力を持った人がひとりでも増えていく、そんなことを願っています。

Written by Mai Kikuchi

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