自己決定力溢れる若きチャレンジャーを育んだもの。親の私たちができること。

みらいキャンパス物語
2024.03.07

「“わが子“のための、“私のおや力“を俯瞰で見つめる。探究する。」
伸びゆくわが子を柔軟に受け止め、応援するために、親自身が自分の思考を柔らかくする、おとなのためのトークイベント、おや力探究Café。2月22日に第3回が開催されました。

今回のゲストは株式会社Emer代表取締役:板本大輝さん・業務責任者:柴田駿さん、株式会社Aporia代表取締役:佐藤穂波さん、学生団体「わーくしょっぷ屋さん」共同代表:鈴木瑠花さんの4名。いずれも学生起業や学生団体の代表として活躍する、二十歳の若きチャレンジャーたちです。今の事業での挑戦、今の自分を育んでくれた親への思いをまっすぐに語ってくれる彼らの言葉に、多くの気づきと、感動と勇気をもらえた90分でした。

「誰かの悩みや課題を解決することが、自分にだってできるはず。挑戦していいんだ。」大学でそれに気づけたことが、起業や活動の始まり。

板本さん・柴田さんは、現在、株式会社EMERを立ち上げ、「スポーツを生業にする人を増やし、スポーツチームから各地に経済圏を生む」というテーマで事業に取り組んでいます。

彼ら自身、島根と横浜で、それぞれにサッカーに夢中で取り組み、本気でプロを目指し、インターハイ出場チームの推薦を得たり、海外でプロテストを受けたりするなど、「プロ一歩手前」まで行っていたふたり。そんな努力を続けてきた彼らだからこそ、スポーツビジネスの難しさに気づき、プロやアマチュアとしてスポーツに取り組む人を支援する事業に挑戦しています。起業のきっかけは、板本さんが高校生の時に、遠方にいるお姉さんの為に作った1本の動画。その動画にたくさんの人が反応してくれたことで、「自分にも誰かの悩みや課題を解決することができるんだ」と気づいたことから、板本さんの起業は始まっています。

飲食にかかわる事業に挑戦する佐藤さんはSober Curious(ソバーキュリアス)という考え方に基づく、「飲む人も飲まない人も、誰もが楽しめるバー」の準備を進めています。

「自分たちのメンバーの中に、未成年や、お酒が飲めない人が居た。皆が楽しめる場所がなかった。だったら“自分たちで創ればいいんじゃない?“と思った」それが挑戦の始まりでした。佐藤さんの軸には、だれもが分断を感じることのない、多様性を認め合う社会にしたい、という強い思いがあります。

地方出身の鈴木さんは、自分自身が感じた都市部と地方の教育機会の格差をなくしたいと、自ら学生団体を立ち上げ、中・高生に向けた教育プログラムを開発・提供中です。また、平行して、「わんこが愛されている家族のもとで一生を終える世界を創る」ために、ペット領域での事業開発も進めています。

小学生の時に知った、ペットの殺処分という課題。中学・高校と進む中で、その課題に対する怒りはフツフツと大きくなりつつも、「きっと自分じゃない誰かが何とかするだろう」と思っていた、とのこと。でも、「本気で何とかしたい。だったら、自分が挑戦してみればいい。この大学に来て、いろいろなことに挑戦する同期に囲まれ、自分のことも応援してくれる環境に囲まれる中で、“自分も夢を叫んでいいんだ。挑戦していいんだ”と思えたんです」と話してくれました。

「自己肯定」と同時に「他者肯定」を大切にする環境。それが「挑戦」と「自己決定力」を育む。

彼ら4人が通う武蔵野大学アントレプレナーシップ学部は、実学・実践の起業家教育を行う学部であり、多くの学生がそれぞれのテーマに向かって挑戦しています。学部のモットーは「人の夢を笑わない」こと。だからこそ、誰もが自分の夢を語り、誰もがお互いの夢を応援し合っています。その「心理的安全性」が生み出す環境が、彼らに自由な輝きを与え、挑戦を育む土壌となっています。
これは大学だけではなく、家庭においても言えること。彼らの話を深堀りすると、「親は自分の夢をまっすぐに応援してくれていた」「親とよく対話をした」「ただ自分の夢を応援するだけじゃなく、“Yes. And…”で返してくれる」と、家庭が「肯定」と「支援」という「愛」に溢れていたことが見えてきました。

親が見せてくれたのは、多様な選択肢と、子どもの挑戦への本気の応援。そして、親自身が夢に挑戦する姿。

彼らが大学・学部を選んだ理由は四者四様。もちろん、育った場所も、育った環境・背景もさまざま。ただ、彼らの話の中から、共通して見えてきたことがいくつかありました。

その一つは、親が、彼らの挑戦をまっすぐに応援してくれたこと。「やりたい、と言った習い事はやらせてくれた(佐藤さん)」「高校生で起業した時の、最初の資金を貸してもらった(板本さん)」「海外で挑戦したいと言ったら“行っておいで”と言ってくれた(柴田さん)」…同じ親として想像すると、きっと内心では心配だったであろうことも、黙って応援してあげていた…そんな保護者の方の姿が見えてきました。
二つ目は、多様な選択肢や、アドバイスをくれる大人との出会いが、彼らの前にあったこと。鈴木さんは「母が高校の新設コースを見つけて教えてくれた。その学校のオープンキャンパスで、教科書の中だけじゃない勉強があることを知った」と語ります。板本さんは、「島根にiターンしていた起業家の方が、ビジネスの本質を教えてくれた。それが自分の起業の始まりだった」と言います。佐藤さんは「高校時代の留学経験で、海外の多様な人たちに触れた。それが今の自分を創っている」と話してくれました。
多様な選択肢を見せてくれたのは親や出会った大人たち。選んだのは彼ら自身。散りばめられた“きっかけ”の中で、自分で意思決定をする経験を重ねてくることができたからこそ、今の彼らがある。これも、4人の大きな意味での共通項でした。
三つめは、「親自身が夢を持ち、挑戦する姿を彼らに見せてくれていたこと」。柴田さんは、「自分が中学生だったころ、母が、長年思い描いていた保育士になる夢に挑戦し、叶えた。そこから母親自身がずいぶん変わったと思います」と語ります。また、佐藤さんは「父親が最大の尊敬の対象。宇宙関係の仕事をしている父は、大きな夢を本当に叶えようと思って仕事をしている。その姿がカッコイイ。」と語ります。
親自身が夢に挑戦しているからこそ、子どもの夢もまっすぐに応援してくれる。それが本当の意味で、子どもに勇気を与えてくれるのかもしれません。

親が私にくれたもの。「人生」。「視点」。「愛」。そして「何があっても帰って来られる場所」。

起業・学生団体活動という方法で、それぞれのテーマで「前」に向かって挑戦している彼らに、敢えて「過去」を語ってもらった今回のトークカフェ。最後に2つの質問を投げかけさせてもらいました。
1つ目は、「親がくれたものを、一言で言うならば?」という質問。
板本さんは、「人生」と答えます。「今の自分があるのは、親や周りの人達が居るから。自分は起業して、プレゼンなどで人前で話す機会も多い。でも、自分は弱くて、意外と脆くて、一人では何もできない。今の自分がいるのは、周りが居てくれるから。親が育ててくれたから。」と言葉にしてくれました。
佐藤さんは「視点」。親がいろいろな世界、いろいろなチャンスに出会わせてくれたからこそ、今の自分が居る、と。
柴田さんは「」とまっすぐに答えてくれました。ブラジルで、照れもなく親への愛を表現する人達の中に入ってみて、伝えることの大切さに気付き、改めて親の愛にも気づいた、と。
そして、鈴木さんは「何があっても帰って来られる場所」だと答えます。「自分のテーマ、課題解決のために外では頑張っているが、家族の元に変えればただただ子どもで居られる。そうやって安心して帰れる場所が、私にはある。それが、親が私にくれたもの」だと言葉にしてくれました。

二十歳の今思う、「かっこいい大人とは?」

大人の入り口に立ち、すでに大人と交わりながら多くの挑戦を始めている彼ら。
その現在地点で思う「カッコイイ大人とは?」を尋ねると、
夢を追いかけている大人(佐藤さん)」
「素直でまっすぐな大人(柴田さん)」
「自分の夢を追いかけながら仲間の夢も応援できる大人(鈴木さん)」という答えが。
聞いている参加者の皆さんの背筋が伸びた瞬間でした。
最後に、板本さんは今日ここにきている方がた」と答えてくれました。「自分は今、自分の事業のことで精いっぱい。1万円稼ぐのも、メチャクチャ大変…それなのに、大人たちは働きながら子育てをしていて、それだけですごい。さらにこういうところに参加して、子どものために何かひとつでも持って帰ろうとされている。それはとてもカッコイイ。」と語ってくれました。板本さんの内側からあふれ出てくる、素直で優しい言葉に、聞いている参加者の方の胸の中に、温かい感動が溢れていました。

親にできることは、たくさんある。

子どもとしても、大人としても語ってくれた二十歳の若きチャレンジャーたち。
聞いていた参加者の多くが「こんな子に育ってほしい」と感じたのは、学歴や経歴などの表面的なものではなく、彼ら自身の内側からあふれ出てくる素直さやまっすぐさ、自己決定力や行動力の部分でした。それを育んだのは、親の愛と見守り・応援、親自身の挑戦する姿であることも、彼らの言葉が教えてくれました。
親にできることはたくさんある。そして、彼らのような若者がいる、この国の未来は明るい。そんな感想が溢れた、またとないトークイベントでした。

次回は3/24(日)10:00~。「子どもたちの今に向き合う」をテーマに、子どもたちが主体の学びを創る教育者をお迎えして。

次回の「おや力探究Café」のゲストは、HILLOCK初等部 カリキュラムディレクターの五木田洋平さん。

10年間の私立小学校での教員経験の後、東京・世田谷に「第三の学校」と言われるオルタナティブスクールを開講、子どもが主役の主体的な学びを展開する五木田先生にご登壇いただきます。4月・進級を前にした子どもたちに寄り添うために、ついつい力が入りがちな親が心がけたいことなど、このタイミングだからこそ聞いておきたいお話を伺います。
子どもも親も、健やかな春を迎えるためのヒントに溢れたトークイベントになること、間違いなしです。ぜひご参加ください。

お申し込みはこちらから▽
https://enquete.benesse.ne.jp/forms/o/we859675e5/form

Written by おや力探究Café店長 Miki Isogai




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