自分で自分の幸せを創っていくチカラを、おとなも、子どもも。
2024年12月に、ベネッセ教育総合研究所が、「小学生から高校生の親子の『幸せ実感』の追跡データ」(最下部にリンク)を発表しました。主席研究員 木村治生氏のまとめによると、親子の「幸せ実感」は相互に関連しており、家族関係は子どもにとって幸せの基盤であることがわかります。親子の幸せ実感と、学びや人生を自分で推し進めていく力について、みらいキャンパス総合責任者の城座が語ります。
たくさんの本質的な学びの機会から見えてきた大切なこと
みらいキャンパスを常時開設するようになって、まもなく2年。その間、学びに集まってきた子どもたち、保護者のかたがた、講師や300人委員会の皆さんとの対話を通して、いくつか「これが学びの真理といえるのではないかな」と思える気づきを得てきました。
■自分の中に芽生えた探究心を大切にすることで、学びはどこまでも自由に広がったり深まったりしていく
■「おもしろい!」「やってみたい!」と好奇心に火がつく瞬間は、ひとりの学びでも起こるが、仲間との協働的な学び(刺激や切磋琢磨の機会、喜びを共有しあう機会)を通してより起こる
■子どもたちに創造性を最大限発揮してもらうには、おとなが「フタ」をしてしまわないことが大切。子どもたちの気づきや驚き、個性を受けとめ、「共に喜ぶ」「共におもしろがる」のがよい
そして、子どもたちが自分の学びを自分で推し進められるようになっていくプロセスの中で必ず起こることが「自分は何が好きで、どんなことをおもしろいと感じるのか」という現在地点と、「もっとどうなっていったら嬉しいのか、楽しいのか」という目的やゴールのイメージを自己認識して、他者に対しても表現できるようになっていく、ということです。抽象概念を理解して自己をメタ認知する力が急速に発達していく、小学3-4年生くらいから特にその様子がみられるようになります。
幸福な自分を創るために自己を推し進める力の大切さ
この「自分のことをよくわかっていて、その現在地点から、ありたい方向に向かって自分を推し進めていく力」は、学びにおいても、人生の幸福追求においても、大切な力なのだと感じます。
学びにおいては、まず、他の誰とも異なる、唯一無二の自分の個性や特性を認識し、引き受けていく。そのうえで、「どうなりたいか」をイメージし、そのイメージに向かって、教科や探究の学び、生活の中での経験、他者との対話やあらゆる挑戦や刺激などを通して、学びや気づきを栄養として得て、自分のものとしていく。
もしくは、必ずしも最終ゴールや目的をイメージしていなくとも、自分が知りたいと思うこと、おもしろいと思うことを直感的に選びとりながら、その学びや経験を重ねていくことで、新しい自己ができていく。
これが主体的に学びを進めていける「自律的な学習者」の学びのプロセスです。
幸福追求についても同じです。自分が何が好きで、どうなると「幸せ」と感じるのか、何をすると「ゴキゲン」になれるのかを知っている。そのうえで、経験や機会を選んだり、付き合う人や時間を調整したりと、自己をコントロールしていく。すると、「幸せと感じられる、いま、ココ」という時間や空間が増えていき、笑顔で前向きに過ごせる人生の時間や空間も増えていきます。
おとな自身が幸せであること。そのために、学びや経験を重ねていくこと。
子どもたちの「自分軸を起点に、学びや人生を推し進めていく力」「ありたい方向に向かっていくための自己調整力」を尊重・支援していくためにも、まずは、周りにいるおとな自身がそのような姿勢、スタンス、マインドセットを持てているとよいのだと思います。
ベネッセ教育総合研究所の追跡データとそのまとめ(最下部にリンク)にもあるように、おとなの幸福感は、子どもに伝播し、子どもの幸福感がまたおとなに伝播していくという相互作用が見られることがわかっています。
「おとなも、子どもも、それぞれが、各々の幸せに向かっている状態」を尊重しあえる関係性を家族の中にも持てていると、同データにある「家族との関係の満足度」が高まり、より子どもたちの幸せ実感も、おとなの幸せ実感も高めていけるでしょう。
「子どもを幸せに」と願うならば、まず、おとなも含めた、家族の構成員ひとりひとりの「幸福」にちゃんと焦点をあてる。そして、おとなも「自分軸」や「自分にとっての心地よい時間や空間」「夢や目標」、「自分の幸せのために自己調整していくこと」などを意識しながら、共に豊かな時間、人生を創り上げていきたいものです。
おとなの自分軸を見つめる思考の習慣を
子育てに忙しいと、ついつい「ないがしろ」「後回し」にしてしまいがちな、おとなの幸福度。日々の生活を回していくこと、子どもに応答し支えていくこと、仕事や生活の中での役割などに追われて、自分をみつめたり、温めたりする時間を損ないがちです。
自分をみつめる思考の方法を知り、習慣として持てていると、忙しいなかでも、ちょっとした瞬間に内省したり、自己を振り返ったり、励ましたり。またその内省から見えてきた方向軸をもとに、さらに新たな行動を起こしていくことができます。自分の人生や学び、幸福について、自分の舵を自分で握る、主体的な創造者となっていくことができるのです。
みらいキャンパスでは、子どもの学びだけでなく、子どもの学びの環境をとりまく、おとなの在り方にも着目し、おとなの価値観や自分軸について対話をする「おとなの対話の会(毎月第3火曜開催)」や「おとな講座」を実施してきました。
1月25日(土)に開催する、おとな講座「『自分軸』で生きる航海術 ~正しい生き方から、自分らしい生き方へ~」は、12月の対話の会(最下部にレポート記事リンク)でゲストスピーカーとしてお迎えした、渋谷聡子さんを講師に、自分の内側にある「大切な価値観」を自覚して、「自分らしく生きる指針」を見つけ育んでいく思考の方法を学んでいきます。
実は、わたくし城座も受講生として参加予定です。子育てにおいても、仕事においても、家庭の運営においても、人生全般においても、「自分が大切にしたい価値観」をしっかりわかって、主体的に自己を推し進めているか。もしくは、誰かの別の船に乗せられたまま受動的に生きていくか、は大きな違いです。
主体的に人生の舵をとり、また子どもたちのその姿勢も認め、尊重するよい関係性を築いていきたいものです。ひきつづき、みらいキャンパスの講座や対話の会で、お互いの価値観に気づき合いながら、皆様とともに、よい学びの環境づくりを目指していけたらと思います。
最後までお読みくださりありがとうございます。どこかの対話の機会や講座の場で、ぜひお会いしてお話しする機会がございましたらうれしいです。
城座多紀子 Takiko Shiroza (みらいキャンパス総合責任者)
<参考リンク>
■ベネッセ教育総合研究所 2024年12月18日リリース
【小学生から高校生の親子の「幸せ実感」の追跡データ】子ども・保護者ともに 3 割が「とても幸せ」と回答:親子の幸せは相互に影響しており、子どもだけでなく親自身が幸せを実感できることが重要
newsLetter_20241218.pdf
■みらいキャンパス おとな講座:「自分軸」で生きる航海術 ~正しい生き方から、自分らしい生き方へ ~(全3回 1/25・2/8・2/22 ※申込締切日1/23)
https://mirai-benesse.peatix.com/
■みらいキャンパス おとなの対話の会「本当の話をしよう」12月の会(ゲスト:渋谷聡子さん)記事レポート「自分の内なる願いに気づくことは、自分の命を大切にすること」
https://miraicampus.benesse.co.jp/contents/2009/
■みらいキャンパス おとなの対話の会「本当の話をしよう」1月のご案内(1/21(火)12-13時 ZOOM開催、参加無料)
鹿児島県 新留小学校設立準備財団のみなさんと「生きる力」について語り合う
ひとりひとりの「あたりまえ」「ふつう」「心地よい」と向き合う教育とは
https://bit.ly/3P0mqjH