「うちの子、自分に向いていることが分かっていない気がする」 「進路を周りに流されて選んでしまわないか心配」――そんな悩みをお持ちのかたも多いのではないでしょうか。将来の選択肢が多様化する今、自己理解を深めることの重要性が増しています。みらいキャンパスは、2025年4月に開校したベネッセ高等学院にて、「自分を知る」をテーマに、生徒一人ひとりが自分を見つめ直し、将来のヒントを見つけるきっかけをつくる自分発見講座を提供しています。 

本記事では、講座内での取り組みについて、自分発見講座・企画担当の伊藤と、広報担当の田中がレポートします。ご家庭で実践できる親子対話を深める方法についても、ご紹介していますので、ぜひ最後までお読みください! 

伊藤里紗

未来の学びプロジェクトにて、クリエイティブディレクターとして、小中学生向けオンライン探究授業の開発や、「自分軸」に関する学びの設計を担当。ベネッセ高等学院における自分発見講座の企画・制作にも携わっている。

 

田中みなみ

未来の学びプロジェクトで、小中学生向けオンライン探究授業の開発や、告知・広報運用を担当している。 

自己理解力・自分を語る力が未来をひらく 

 高校生になると、多くの人が「将来、どうする?」という問いに向き合わざるを得なくなります。進路を考える時期が迫るなかで、「まだ決まっていない自分」に不安を感じたり、「進路が決まっていないのはダメなこと」と思い込んでしまったりする人も少なくありません。変化の激しい時代だからこそ、自分らしさや特性を理解した上で、自らの意思で道を選ぶことが大切ですが、日常では自分らしさややりたいことを考える機会が少ないと言われています。 

 ベネッセ高等学院の自分発見講座では、生徒が自分の好きなことや強み、大切にしていることにじっくり向き合う時間を設けています。そうした時間を重ねることで、 自分らしさに気づくきっかけが生まれます。たとえば、「絵が好き」という気持ちの裏には、「絵を描くことが好き」や「自己表現が好き」といった自分らしさが隠れていることもあります。また、仲間やコーチとの対話を通して、自分の強みや好きなこと、大切にしている考え方を掘り下げ、それらを自分の言葉で表現する力を育んでいくことができます。自分発見講座で得られるこうした“自己理解力”や”自分のことを自分で語る力”は、変化の激しい時代において、進路を自己決定していくための大切な土台となります。特に、進路選択を控えた高校生にとって、自分を知ることは、自分らしく幸せな人生を歩むための大切な最初の1歩となるはずです。 

“自分を楽しく知る”を叶える自分発見講座のカリキュラムとは

 自分発見講座で大切にしているのは、生徒たちが「他者と関わりながら、楽しく自分を知る」ことです。その実現のために、心理的安全性を最優先にしたカリキュラム構成としています。初回は「参加するだけでもOK」というスタンスで、無理なく楽しめる雰囲気を大切にしています。自分のことを話してもいいな、と安心できる環境が整った上で、他者受容・自己受容の機会を用意したり、最終的には自分の進路や働くことについて考える時間も用意したりしています。 

 そんな全体カリキュラムのなかで、「楽しく自分を知る」ための方法として用意しているのが、感情や思考にアプローチする多彩なワークです。1つの方法に特化するのではなく、様々な方法に少しずつ触れることで、自分に合ったやりかたを見つけてほしいというねらいがあります。 
 たとえば、【感情に向き合うワーク】では「感情コントロール」をテーマに、自分がネガティブな気持ちになったときにどんな心身の反応があるか、どう対処すれば自分らしくいられるかを考えます。自分の中にあるものに気づき、自己決定を重ね、満たされるという状態を目指したとき、悩みや不安などネガティブな感情と向き合う力は重要です。自分自身を大切にできるようになるためにも、自分発見講座には感情と向き合う機会を意識的に入れ込んでいます。 

 また、思考の枠を広げるための【もしもの世界】というワークも用意しています。「願いを達成できる条件が全て整っていたら自分は何をしたい?」という視点で未来を自由に楽しく想像することで、普段は抑えてしまうような本音や願いが浮かび上がり、自分の価値観に気づくことができ、「やってみたい!」という気持ちが生まれる効果もあります。現実の制約から離れた発想によって、楽しく自己理解を深めることができるのです。 

 さらに、講座内では他者と関わるハードルを下げるための工夫も散りばめています。たとえば、一般的な自己紹介の時間を設けずにオンラインのツールで遊びながら、答えやすくて盛り上がる問いに答える時間を通して少しずつ自己開示を進められるような設計や、対人関係に悩みやすい高校生の特性をふまえて、「なぜ意見の対立が起きてしまうのか」をテーマに人との関係性を学ぶ回も用意しています。また、生徒は、毎回の自分のコンディションに合わせてカメラやマイクのON/OFF、発言回数やタイミングなどの参加スタイルを選ぶことができ、「いちばん心地の良い参加の仕方を自分で決めていい」という安心感の中で、コンフォートゾーンを大切にしながら、少しずつ外に出てみる挑戦を重ね、他者とのつながりを築くことができます。 

 こうした講座の全体設計には、コーチングやカウンセリングの知見、高校の教員や大学教授といった専門家へのヒアリング、通信制高校の生徒や保護者の声を取り入れています。また、 1人ひとりの中にあるものに目を向けることで、Well-being(よく生きる)を目指す「ポジティブ心理学」や、自分・他者・社会の3つの視点から「自尊感情を育むSEL(社会性と情動の学習)」の考え方は、講座全体の設計において重要な柱となっています。 

“あなたらしく、どうなりたいかを見つけられる” ベネッセ高等学院ならではの仕掛け 

 自分発見講座でもう1つ大切にしているのは、ベネッセ高等学院が掲げる「ベネッセ高等学院Well-beingプラン」とのつながりです。ベネッセ高等学院には、「BE YOU.BECOME MORE.」(あなたらしく。なりたい自分を見つけよう。)という教育理念があります。この理念のもと、自分発見講座にも各回を受けて終わり、ではなく、「どうなりたいか」が見つかる工夫が散りばめられています。 

  その1つとして、自分の内面を「見える化」できるプロフィール帳(=自分の取扱説明書)作成ワークを取り入れています。自分発見講座の各回のワークを通じて見えてきた思考や感情、価値観をプロフィール帳に少しずつ書き出すことで、第1タームの終わりには、トリセツ(取扱説明書)の形で“今の自分”が可視化され、生徒が「自分ってどんな人?」という問いに答えられるようになっています。 

 また、ベネッセ高等学院全体で、各授業の終わりに生徒が書いた”活動報告シート”の内容が、葉っぱをかたどった1枚・1枚のメモに転記され、自分らしさの木としてまとめられる「気になる木」というシートも活用されています。そして、トリセツや「気になる木」などの形でまとめられた生徒のポートフォリオは担任やメンターにも共有され、「講座の外」でも生徒の心の動きを受け止められる体制が整えられています。このように、様々な大人が密な連携をとりながら1人の生徒をサポートしていくこの仕組みは、「BE YOU.BECOME MORE.」(あなたらしく。なりたい自分を見つけよう。)の教育理念を掲げるベネッセ高等学院ならではの特徴です。  

家庭でできる「自分発見」のヒント – 親子対話のコツ –  

 まずは「たっぷり聞く」ことから。お子さまが好きなことや日常で起きたことをぽろっと話してくれたときには、「そのときどんな気分だった?」 「なぜそれをやろうと思ったの?」など、ぜひ深掘りのお声がけをしてみてください。そうした深堀りを日常のなかで少しずつ重ね、気持ちを言語化することで、好きなものの共通項が見えてきたり、お子さまが大切にしたいことが見えてくるきっかけになったりします。 

 大切なのは、評価やアドバイスをせずに、まず“ありのまま”を受け止めること。ネガティブな感情も「そうだったんだね」と受け止めることで、安心して自分を出せるようになります。学校ではなかなか出せないネガティブな感情も、家庭だったら言いやすい、ということもあるでしょう。自分発見講座では生徒の“好き”や“気持ち”に向き合う時間をとっていますが、集団の場では時間に限りがあります。だからこそ、じっくりと対話できる家庭での時間がとても大切です。自分の感情に蓋をせず、まずは言葉にして、湧き上がる感情をそのまま受けとめ、必要に応じて手放していく「自己受容」の練習をご家庭で重ねていくことで、”自己理解力”や”自分のことを自分で語る力”が培われていくと素敵ですね。 

「自分って、いいかも!」の積み重ねが、未来をつくる 

 生徒が「自分を知る」機会は、授業の中だけではありません。日々のちょっとした出来事、家庭でのコミュニケーションも含めて、生活にはたくさんの“原体験”があります。自分発見講座でのワークや周りの人との対話を通じて、そうした点と点が少しずつ繋がって線になり、「こんなことができた」 「こんな自分もいいかも」と自分自身を少しずつ認めていくこと――その積み重ねこそが、これからの進路や人生の選択を支える土台になると私たちは考えています。自分を理解することは難しいけれど、自分の未来は自分にしか選べない。だからこそ、生徒たちが自分を知るヒントを見つけ、自分らしく幸せな人生を歩んでいけるように、という願いを込めて自分発見講座を設計しています。 
 そんな自分発見講座を担う講師の想いや、実際の生徒の様子を紹介するレポート記事も公開しています。ぜひ下記リンクより、自分発見講座の講師インタビュー記事をご覧ください。 

ベネッセ高等学院 自分発見講座の講師のインタビュー記事はこちら 

 そして、ベネッセ高等学院では、いよいよ6月から「未来発見講座」がスタートします。自分発見講座で気づいた「好き」や「気になる」を手がかりに、生徒たちは複数の講座の中から自分の興味に合わせて講座を選び、新たな一歩を踏み出していきます。自分を理解した生徒たちが、自分の興味があるものを「選ぶ」ステップへ。生徒たちが楽しく受講する講座を自己選択できるようにどんな工夫をしたのか?続報でお伝えします。 

ベネッセ高等学院 公式HPはこちら