
みらいキャンパスは、2025年4月開校のベネッセ高等学院にて、「自分を知る」をテーマにした自分発見講座を提供しています。本記事では、講座を担当する講師へのインタビューを交えながら、生徒の様子や講師の想いなど、実施の様子を詳しくご紹介!また、ご家庭でもすぐに実践できる自分発見ワークの方法や、親子の対話がより深まるコツもご紹介します。ぜひ最後までお読みいただき、ご家庭でのコミュニケーションやお子さまの自己理解のヒントとしてお役立てください。

さだかね志保
NVC Singapore プログラムディレクター
ベネッセ高等学院 自分発見コーチ
学生時代から教育現場に身を置き、留学先の英国ヨーク大学では教育学及び発達心理学を専攻。全ての教育現場に非暴力の精神が根付くことを願い、NVC Singaporeに創設期から参画。各種セミナー開催、コンテンツ開発に携わる。
ベネッセ高等学院の自分発見コーチに参画した理由については以下のように語る。
「私自身、『自分』というものがよく分からず、生きにくさを感じていた過去があります。その経験から、自分探究は、子どもたちの「生きる力」になると感じています。自分発見講座を通して、子どもたちの生きやすさと人生の充実につながるサポートができたら嬉しい、そんな想いで講師を引き受けました」
自分の”好き”に向き合う、【大好きマップ】の意義とは?
自分発見講座のはじめの回では、自分の”好き”を自由に書き出す【大好きマップ】というワークを取り入れています。生徒は、今ハマっているものはもちろん、なんとなく心が動くことや、安心できる瞬間など、“なんか好き”という感覚に目を向けて【大好きマップ】を完成させていきます。
- さだかねさんから見て、高校生が【大好きマップ】に取り組む意義は何ですか?
普段、私たちは“評価されるための選択”を無意識に重ねがちです。特に中高生は、テストや入試といった外からの評価に触れることが多く、「これをやれば褒められる」 「これを選ぶと安心」といった枠の中で行動しやすくなっている子も多いのではないかと思っています。
【大好きマップ】に取り組むことによって、誰かに評価されるためではなく、“自分の中から自然と湧いてくるもの”に気づくきっかけが生まれます。マップを書きながら「私、こんなものが好きだったんだ」 「なんとなくいつも選んでいたのには、理由があったんだ」と、自分の内側にある価値観や傾向が少しずつ見えてきます。もちろん、短時間で「自分のすべて」が明らかになるわけではありませんが、 “自分らしさ”の一端を見つめるきっかけになります。
また、ある授業では、「うまく書き進められない」と正直にシェアしてくれた生徒に対して、クラスメイト同士で「こんなふうに考えてみたら?」 「こんな“好き”もあるかもね」と次々にヒントを送り合う場面がありました。そうして完成した【大好きマップ】を、その生徒は勇気を出してクラス全体に共有してくれました。そこには、その生徒自身の“好き”だけでなく、クラスメイトから寄せられた温かな想いも映し出されていて、とても印象的でした。ヒントを出してくれたクラスメイトたちも、友だちに貢献できて嬉しかったと思いますし、共有してくれた生徒も自分の大好きなものをみんなに共有して「いいね」 「わかる」と認められたことが嬉しかったのではないかと思います。そうやって”好き”をクラスの仲間と共有し、「いいね!」 「わかる!」と喜び合う時間を重ねていくことが、安心感や自己信頼へとつながると考えていますし、それも【大好きマップ】の大きな意義だと感じています。
「やらないと」から「やってみたい」へ 子どもの心に寄り添う講師の関わりとは?
ー 中には、【大好きマップ】をうまく書き出せない人や共有に抵抗を感じる人もいると思いますが、そんな子どもたちにどんな想いで向き合われていますか?
生徒たちにはまず、「自分の内側にある感覚を大切にしていいんだよ」ということが、きちんと伝わるよう意識しています。そのため、【大好きマップ】に書かれた言葉一つひとつに興味を持ち、たとえ私の知らない内容でも、心からワクワクしながら質問を重ねるようにしています。また、「自分の心地よさを大切にしていい」 「気が済まないのに”やらないといけない”という義務感から動かなくていい」ということは意識的に伝えています。
私自身を振り返っても、高校生の頃に「自分が大切にされていない」という感覚や体験がありました。きっと生徒の中にも、そういった感覚を覚えたことがある人がいるのではないかと思っています。もしかしたら、「自分があんな風だったからいけなかったのかな」と、自分を責めたり、自己卑下したりするような形で本音を心の中にしまい込んでいる子もいるかもしれません。だからこそ、「あなたの意思は尊重されていいんだよ」というメッセージをしっかり届けたいと思っています。
その一方で、生徒たちには相手や場に意識を向けたり、他者と交流したりする機会をもってほしいという願いもあります。「感じたことを共有することで、みんなの学びがより深まる。あなたの一歩の頑張りが、全体の学びに貢献するんだよ」など、生徒が「少しだけ頑張ってみようかな」と思えるような声かけも意識しています。また、生徒のチャレンジのハードルを下げるために、自分の失敗経験も少しずつ織り交ぜて話しています。「失敗してもいいんだ」 「やってみようかな」と一歩を踏み出す後押しになれたらと考えています。そうして、一歩を踏み出した生徒たちが、「ちょっとした自分の行動が、他者への貢献になるんだ。その力が自分にあるんだ。」と気づいてくれたら嬉しいです。
参加の様子から見えた生徒のニーズや想いとは?
ー 自分発見講座も始まったばかりですが、生徒の様子から感じることや思うことはありますか?
あるとき、ずっと画面もマイクもオフのまま参加していた生徒が、休憩時間にチャットで「みんなと話してみたい」と書き込んでくれたことがありました。さらにその後、「声出してみていいですか?」と伝えてくれて、少しずつ話し始めてくれたんです。そのやりとりがとても印象に残っています。外からは見えにくくても、授業に参加してくれていて、こちらから問いかけるとチャットで返事をくれる。その行動のひとつひとつに、「つながりたい」 「知りたい」 「知ってほしい」という小さな願いが込められているのかもしれない。そう感じるようになりました。
だからこそ、一人ひとりの言葉や声を丁寧に受け止めることを大切にしています。自分発見講座では、チャットでコミュニケーションをとる生徒が多くいますが、チャットはどうしてもやりとりに時差があったり、言葉にするまでに時間がかかったりすることもあります。私自身も、話が進んでしまってチャットを送るタイミングを失ったときには「書きかけていたのにどうしよう」 「もう送らなくていいか」と感じることがあります。そのため、生徒たちには「後からでもいいよ」 「ゆっくりで大丈夫だよ」と、安心して言葉を出せるような声かけを意識しています。そうして、生徒たちが自分のペースでつながろうとする気持ちに、応えられたらと思っています。
すぐにご家庭でできる【大好きマップ】の取り組み方をご紹介!
自分発見講座で実施している【大好きマップ】はご家庭でも簡単に取り組むことができます。
用意するものは、紙とペンだけ。作り方もとてもシンプルです。紙の中央に名前を書いて、そのまわりに「好きなこと」 「楽しいと感じること」 「心地よい時間」 「ワクワクする瞬間」などを、自由に書き出していきます。1つのことを書いて、連想したものがあれば、線でつないで書いていきましょう。書き出したことの中から、下図のように特に大切な”好き”に印をつけることで、大事にしたいキーワードが見つかるかもしれません。

ー ご家庭で取り組むときのアドバイスや声かけのコツはありますか?
「好きなことを書き出してみよう」と言われても、なかなかうまく言葉にできないことがあります。そんなときは、「好き」を別の言葉に言い換えて問いかけてみるのがおすすめです。
たとえば、
「何をしているときが心地いい?」
「どんなときに嬉しい気持ちになる?」
といったように、感覚に寄り添った言葉を使うことで、考えやすくなります。
また、保護者のかたにしか見えていないお子さまの様子もあると思います。
「この前、これをしているとき、すごく良い表情をしていたよ」
「これをやっているとき、とても楽しそうだったね」
など、保護者のかたからの視点を伝えることで、お子さまが自分では気づいていなかった「好き」に気づくことができるかもしれません。その際、決めつけずに「楽しそうだったけど、実際どうだった?」と、本人の気持ちを丁寧に引き出すことが大切です。
マップを書き終えたあとは、ぜひ好きなことをしているときの感覚や、自分の中で何を大事にできている感覚があるかを一緒に深掘りしてみるのがおすすめです。
たとえば、「絵を描くこと」が好きなら、
「絵を描いているとき、どんな気持ち?」
「その時間で、自分のどんなところを大切にできている感じがする?」
などと問いかけていくことで、「夢中になれる」 「達成感がある」 「自分らしさを表現できる」など、自分の中に生まれている感情や自分の価値観に深く目を向けることができ、自己理解が深まるはずです。
自分発見講座は、まだまだ続いていきます。これからも、生徒一人ひとりが自分自身と丁寧に向き合いながら、「好き」や「やりたいこと」を見つけていく姿がとても楽しみです。
そして、ベネッセ高等学院では、いよいよ6月から未来発見講座がスタートします。自分発見講座で得た気づきを手がかりに、生徒が複数の講座の中から自分の興味に合わせて講座を選び、新たな一歩を踏み出していきます。これから一人ひとりのどんな“好き”が育ち、どんな未来を描いていくのか。未来発見講座の続報も、どうぞお楽しみに!
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