誰かの物差しにあわせるのではない、「本当の自分語り」ができる対話の会を開催!

共創レポート
2024.04.26

この4月より、毎月第3火曜日のお昼に、「おとなの対話の会 本当の話をしよう」を開催していきます。ベネッセ社員や、みらいキャンパスを利用くださっている子どもたちの保護者の皆様、講師、未来の学びデザイン300人委員会の皆様、教育や子育てにご関心のある保護者の皆様、学校の先生がたなどにご参加いただくことを想定しています。その記念すべき初回の4月は、ゲストに、映画「given いま、ここ、にある しあわせ」にご家族で出演され、4人のお子さんの子育てをされている塩川亜紗美さん、同映画監督の高橋夏子さんをお迎えし、「子育て観トーク」でおおいに沸きました。 

参加者の皆さんの胸に響いた、塩川亜紗美さんの母親人生とは? 日々の生活や子育ての中で大切にしてきたことは? みらいキャンパス総合責任者の城座が、対話の会を振り返りながらレポートします。

■ゲストプロフィール

塩川亜紗美さん 

映画「given ~いま、ここ、にある しあわせ~」にご家族で出演。個性いっぱいの4人の子育て中。子育てのモットーは「子どものレジリエンスを信じること」。

■ゲストプロフィール

高橋夏子さん 

映像ディレクター。同映画監督。NHK Eテレ「すくすく子育て」ディレクター。映画のお仕事を通して「人それぞれ、その人で生きられる世界」を考えつづけられています。

苦しさを、やさしさとユーモアで包み込んできたからこそ前進できた、塩川家の強さ 

小児がんを患い、眼球と顔の半分近くを切除することになった長男の利音(りおん)くんを含む、4人の子育てをしてきた塩川亜紗美さん。利音くんの闘病や目を失ったことなどを中心に、苦労や悲しみや怖さの中をずっとくぐりぬけてきたお母さんであるはずなのに、とても明るく、力強く、その語り口調はどこまでもやさしい。それはなぜなのか。 

亜紗美さんのお話が進むにつれ、少しずつ謎が解けていきます。 

子どもたちへの深い深い愛情。どの命にも限りがあるという事実を家族全員で痛感した、苦しかった闘病体験。片目と顔の半分近くを失うことと引き換えに、命をとりとめることができた。その命を惜しみ、慈しみ、大切に生きていくことに集中したときに、塩川ファミリーは、ごくごく自然な形で、その苦しみや葛藤を、やさしさとユーモアで包み込んでいった。 

明るく、たくましく、自分の力で人生を切り拓いていってほしい。そう願う亜紗美さんやご主人の想いの強さが、自然と家族全員をつなぐ絆となり、互いへのやさしさとなった。そして、片目を失った利音くんのことを、ほかの3人のきょうだいたちが、ユーモアをもって、クッションのように柔らかく受け止め、生活を笑いや楽しさで満たしていった。 

そのことを、もうひとりのゲスト、高橋夏子さんは「ユーモアや言葉の使い方など、受け止め方の幅がこのうえなく広い」と称えます。 

やわらかな言葉で、やわらかな眼差しで、子どもたちの個性や戸惑い、それぞれの成長を受け止めていきながら、亜紗美さんご自身が、母親として強くなられてきたことがお話を通して見えてきました。 

苦しさを悲劇にするのではなく、発想の転換力を鍛える 

「こうでなくっちゃ」という親としての正しさを子どもたちに押し付けるのではなく。悲しいことを「悲しいね」という顔をして受け止めるだけでなく。子どもたちの様子をみながら、柔軟に親としての立ち位置を変えていく。時に、強く前向きな姿勢も自ら示す。そんな「身のこなし」のやわらかさを携える亜紗美さん。 

時折、利音くんに投げかける亜紗美さんの言葉が光ります。 
「失ったものを数えるな。片目がなければ、もう片方がある。視野が狭ければ、首を回せ。」 

親として、考え方や、ものの見方の違った角度を伝える。 
人が「障がい者」とみたとしても、自分が「そうではない」と思うなら、それでよい。 他者の基準ではなく、自分なりの基準をもって生きる心の強さが大切であることを伝えていきます。 

なかなか自分の意見や考えを出しづらく、他者や世の中の空気感にあわせてしまいがちな時代感、社会に生きているからこそ、「自分なりの判断基準をもつ」という言葉が、きいている参加者の胸に響きました。 

「ズボラかーちゃん」を自ら宣言することが、家族の気持ちを軽くし、子の自立を促していく 

「4人も子どもがいるのだから、みんな一律にしっかり見るなんて、無理!」と、普段から、お子さんたちに宣言しているという亜紗美さん。その言葉をきいて、おもわず、きいている参加者の皆さんの顔もほころびます。 

 「肩の力を抜いて子育てをする」「親もひとりの人間で、失敗したり、笑ったり、泣いたり、感情いっぱいに生きているのだ」ということを自然に、子どもたちにもわかってもらう。 

亜紗美さんご自身が、母親として、そんなふうに自然体でいられるからこそ、お子さんたちも、個性全開でのびのびと、居心地よく暮らしていけるのかもしれません。 

「なにか無理して、肩ひじを張っても、家族だとバレちゃいますしね」とお茶目に笑う亜紗美さんに、なんだか救われたような気持ちにもなれました。参加者のかたからも事後のアンケートで「ズボラかーちゃん万歳!」「親だって、悩んだり、わからないことがあったりしてもいいんだと思えました」といった感想がたくさん寄せられました。 

親も子も、ひとりの人間として、さまざまな感情を抱えながら生きていく。その互いの感情に向き合い、対話を重ね、やさしいコミュニケーションで結び合っていくことが、社会に出たときにも、他者と良好な関係性を築けるようになる、ということにつながっていくのではないか、という亜紗美さんの言葉に、私も参加者の皆さんも、心から深くうなずきました。 

同調圧力にとらわれなくていい、「本当の自分の話」ができる機会、空間を大切に 

「共感をもってお話を聞きながらも、自分の感じ方にも耳を傾けられ、自己を振り返るよい機会になりました」「本質的な話を聞いたあとにじっくり対話することができたのがよかったです」「泣けて笑えて、聴けて話せて、最高の機会でした」といったお声を事後のアンケートにて、たくさんいただきました。 

ゲストのお二人が、本質をとらえ、よくご自身のことをわかっていらっしゃるからこそ、それをうまく言語化してお話しくださり、参加者の胸に響いていました。また参加者のかたが、相手をリスペクトする気持ちをもってゲストや、ほかの参加者のお話を傾聴し、ご自身の価値観にあてながら深く感じ入ってくださいました。そのときに、胸の奥からでてきた感想や言葉を互いに共有しあえ、またその言葉から刺激を受けたり、共感したり、尊敬しあえたりできること。それが、この「本当の話をしよう」の会で実現したかった、対話の意義でもありました。皆さんのおひとり、おひとりの「子育て観」「教育観」に出会えて、とても刺激的で幸せで珠玉のような1時間でした。皆さま、貴重な対話の時間を本当にありがとうございました。 

「おとなの対話の会 本当の話をしよう」は毎月、趣向を変えながらすすめてまいります。次回は5月21日(火)のお昼です。「ウェルビーイング・ダイアログ」で、幸福度アップにつながる問いをもとに、参加者同士で対話を重ねていきます。無料でご参加いただけるオンラインのカジュアルな会なので、前回お越しくださったかたも、次が初めてのかたも、ぜひお気軽に立ち寄っていただけましたらうれしいです。ご一緒に、皆さんそれぞれの「本当の話」に耳を傾けあっていきましょう。 

4月の「本当の話をしよう」の会の録画はこちら
(塩川亜紗美さん、高橋夏子さんのゲストトークを含む、ブレイクアウトルームにわかれるまでの前半部分のみです)

■次回2024年5月21日(火)の、「おとなの対話の会 本当の話をしよう」 
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■次回2024年5月21日(火)の「おとなの対話の会 本当の話をしよう」 
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城座多紀子 Takiko Shiroza (みらいキャンパス総合責任者) 

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